『彼氏彼女の事情』ってどんなアニメ?
おすすめ度
※筆者の主観的な評価です。参考まで。
気になったらとにかく見てみよう!
みどころ
- ただひたすら気持ち悪い物語
「あらすじ」 どんな内容?
宮沢雪野は超がつくほど見栄っ張りな新高校一年生。
つねに周囲の尊敬と憧れの対象でいたい雪野は勉強も美の追求も怠らない。
そんな彼女の行く手を阻む存在がいた。
有馬総一郎は文武両道を地で行く秀才である。
外見もスタイルも良く、自分よりも注目を集める有馬のことを、雪野は一方的に敵対視するようになる。
そんな折、なんと雪野は有馬から告白される。
ライバルに告白されたことで優位に立ったと勘違いし悦に入る雪野は、当然のごとく有馬の告白を断る。
しかしそれ以来、有馬のこと意識するようになり――。
短評・コラム
自己陶酔の胃もたれ
「彼氏彼女の事情」と検索ワードに入れると「気持ち悪い」と出てくる。
思わず、ドキッとする。
胸に手を当てて考える。
実はこれに似たものをネット上でよく見かける。
最たるものが食べログレビューである。一部を引用する。
スロウな恋
やがて、あなたの味が、ぼくの躰に、馴染んでくる。
ぼくの躰が、あなたの味を、じっくりと知っていく。
ひとときの熟成が、深い陶酔を、瞬くように授けてくれる。ぼくは、あなたを、待っていた。
あなたも、ぼくを、待ってくれた。
時間とは、種子であり、発芽であり、花であり、実であり、種子である。
その円環に抱擁される。そんなビーフシチューだった。
https://tabelog.com/tokyo/A1316/A131603/13001552/dtlrvwlst/B111428787/
まるでポエムである。
しかしこれが実際の食べログレビューであり、しかもこのようなリリックが溢れている。
肝心のビーフシチューについて具体的に書かれていないことはさておき、ここにあるのはひたすら他者を置き去りにする「自分語り」であり、その背後には強烈な臭気を放つ「自己陶酔」がある。
そしてこれが「気持ち悪い」の正体である。
「彼氏彼女の事情」の物語構成がまさにそれであり、しかもかなり速いテンポで一人芝居が展開される。
視聴者は先の「ビーフシチュー」を滝のように浴びせかけられ、たちまち呼吸が出来なくなり、気持ち悪くなってしまうというわけだ。
言うまでもないが、「自分語り」とは聞かれてもいない自分の過去の話や自慢話などをとめどなく話し続けることである。
ただ自分を認めてほしいという欲求を粗相のようにぶちまける行為である。
そこには他者の思考が存在しない。
実に不健全であるが、程度の差こそあれ、人はしばしばこういう独りよがりをしてしまう。
漏らしたものが大か小か、それだけの違いしかない。
よく人は他者に対して「頑張れ」という。
私が胸をざわつかせる言葉の一つだ。
頑張るということは相当なエネルギーを要する。生半可ではない。
さらに頑張ることはその人だけの意志にとどまらない。
様々な外的要因が折り重なって今のその人があるのだから当然である。
頑張れない根本的要因はきっと編み目のように入り組んでいて見えない。
発言者はそういった背景を考慮したうえで言っているのか。懐疑的になる。
彼には彼の、彼女には彼女の「事情」がある。
それを忘れずにいたいものである。
エヴァとカレカノ
物語が後半にさしかかると今度は別の気持ち悪さが首をもたげてくる。
それは先に述べたような気持ち悪さよりもっと深層の、人間という生物の根源的な気持ち悪さである。
ここで見る側の視点が宮沢雪野から有馬総一郎へ転換されることになる。
複雑な出自や家庭環境、性描写、内臓をくすぐられるような芝居がかった愛の言葉。
それまで「愛」だった言葉がいつしか「独占」に変わり、人相は醜く歪む。
愛が依存へと変容する醜さがなんともむごたらしく、独特の気持ち悪さが醸成される。
このへんは庵野秀明監督らしさがうかがえる部分でもある。
前作で手掛けた「新世紀エヴァンゲリオン」は言わずもがな、醜い自分に対する自己内省の物語である。
「彼氏彼女の事情」は間違いなくその流れを汲んでいる。
エヴァと言えば、当時は劇場版「Air/まごころを、君に」で幕を閉じたばかりだった。
今作の放送からわずか1年前のことである。
その衝撃的な幕引きを今こそ思い出す。
――「気持ち悪い」。
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ミーハー感も否めませんが、アニメなんて楽しんでなんぼ。
概要
原作 | 津田雅美 |
ジャンル | コメディ、恋愛 |
放送時期 | 1998年 |
話数 | 全26話 |
アニメーション制作 | J.C.スタッフ、GAINAX |
キャスト | 宮沢雪野:榎本温子 有馬総一郎:鈴木千尋 井沢真秀:野田順子 浅葉秀明:私市 淳 芝姫つばさ:新谷真弓 宮沢洋之:草尾毅 宮沢みやこ:小山裕香 宮沢月野:渡邊由紀 宮沢花野:山本麻里安 |
OPテーマ | 「天使のゆびきり」 福田舞 |
EDテーマ | 「夢の中へ」 榎本温子、鈴木千尋 |
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